棚卸差異率の許容範囲は何%?

公開: 2026年7月22日 / 更新: 2026年8月8日

結論

棚卸差異率は「(実在庫−帳簿在庫)÷帳簿在庫×100」で計算し、帳簿数に対して何%ずれたかを表します。何%までなら合格という共通ラインはありません。生鮮か個装品か、単価や回転の速さによって妥当な水準が大きく変わるためです。セーフかアウトかの分かれ目は率の数字そのものではなく、「その商材で、その率が出るのは自然か」にあります。よそで見かけた数値をそのまま合否ラインに持ち込むより、自店で数回ぶんの差異率を残して平常の幅を測り、そこから飛び出した品目だけを追うほうが現実的です。

「棚卸で差異は出たけれど、この差はセーフなのかアウトなのか」——判断のものさしになるのが差異率です。差異の数量そのものより、帳簿に対してどのくらいの割合ずれたかで見ると、品目どうしを公平に比べられます。ここでは計算式と、許容範囲をどう考えればよいかを整理します。

棚卸差異率の計算式

差異率は次の式で求めます。

差異率(%) =(実在庫 − 帳簿在庫)÷ 帳簿在庫 × 100

たとえば帳簿在庫が100個、実在庫が97個なら、(97 − 100)÷ 100 × 100 = −3%。3%分の不足という意味です。符号は、マイナスが「不足(実際が少ない)」、プラスが「過剰(実際が多い)」を表します。現場では符号を外した大きさ(絶対値)で「何%ずれたか」を見ることも多く、原因を追うときは符号の向きも手がかりになります。

個数ではなく割合に直すのは、同じ差でも品目によって重さが違うからです。たとえば2個の不足でも、帳簿200個の品目なら1%、帳簿8個しかない品目なら25%になります。前者は数え漏れ程度で説明が付く範囲ですが、後者は在庫の4分の1が消えている計算で、記録か管理のどこかに穴がある疑いが濃くなります。差異数の一覧ではどちらも同じ「2」に見えてしまうところを、率にすれば自動的に切り分けてくれるわけです。

「何%まで許容」に決まった答えはない

先に答えを書くと、率だけを見て合否を判定できる共通の数字は用意できません。妥当な水準は扱う商材と業種、単価帯しだいで別物になり、どの店にも当てはまる一律の基準は存在しないからです。同じ2%でも、毎日目減りが出る生鮮なら想定の範囲、箱入りで動きの遅い高額品なら見過ごせない大きさ——というふうに読み方が逆になります。そこでまず、自分の店の商材が率の出やすい側なのか出にくい側なのかを押さえておきましょう。

商材の性質差異率への出やすさ(傾向)
生鮮・ロスが避けにくい目減り・廃棄が日常的に出るため、差異率は大きくなりやすい
小型・多数・高回転数え漏れや入数の取り違えが起きやすく、率が振れやすい
高単価・個装・低回転1個の差の影響は大きいが、数量の差自体は出にくい
バラ売り・量り売り計量誤差が乗るため、少量の差が率に反映されやすい

大づかみに言えば、率が小さいほど在庫管理は行き届いていることになり、数%以内をひとつの線引きにしている現場もあります。ただしその数%も、表で言えば生鮮や量り売りの品目には厳しすぎ、高単価・個装・低回転の品目には緩すぎる——その程度のざっくりした感覚だと考えてください。よそのサイトや同業の話で聞いた数字をそのまま自店の合格ラインに据えると、実情と合わないものさしで良し悪しを判断してしまいます。

基準は自店の過去の記録から作る

では何と比べて判断すればよいのか。答えは、他店の数字ではなく自分の店の過去の棚卸結果です。やることは単純で、棚卸のたびに品目別・棚別の差異率を残しておき、数回分を並べて平常の幅を測るだけ。「A棚はだいたい1%前後」「この商材は5%まで振れる」と分かってしまえば、追うべき品目はその幅から飛び出したものに絞れます。逆に、いつもどおりの率まで一件ずつ原因を探すのは、手間のわりに得られるものがありません。

運用に落とすときは、「ここを超えたら必ず現物と伝票を確認する」という線を一本だけ決めておくと迷わずに済みます。線をどこに引くかの分かれ目になるのは、確認にかけられる時間です。低く引けば対象品目が増えて棚卸のたびに時間を取られ、高く引けば見逃しが増えます。最初は平常の幅の少し上に置き、確認しても空振りが続くようなら上げる、原因のある品目を拾いきれていないようなら下げる——と回数を重ねて調整していくのが現実的です。確認に入ってからの原因の切り分け方(記録漏れ・数え間違い・破損廃棄・盗難の順に潰していく手順)は、コラム「棚卸のやり方と差異が出たときの対処」にまとめてあります。

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棚卸集計・差異チェックは、品目ごとに帳簿数・実棚数・単価を入れれば、差異数・差異金額・差異率(差異数÷帳簿数×100)まで一気に出ます。ここで説明した「確認に入る線」は閾値として設定でき(既定5%)、それより大きく振れた品目は色分けされるので、追うべき行がその場で分かります。帳簿数0なのに現物がある品目は要確認あつかい、実棚の欄が空のままなら「未計上」として合計から外したうえで警告します。CSVは取込にも書き出しにも対応、そのまま棚卸報告書として印刷もできます。入力した内容は端末内で処理され、外部へ送り出すことはありません。

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閾値を決めて色分けしておけば、追うべき品目が一目で分かり、手集計の「検算」としても使えます。なお、この記事は差異率というものさしの話です。差異が出たときにまず何をするかは「棚卸で差異が出たらどうする?」、差がプラス・マイナスどちらに出たかで原因を切り分ける方法は「棚卸差異はプラスとマイナスで原因が違う」で、棚割り・担当分け・締めといった棚卸そのものの段取りは上で挙げたコラムで、それぞれ詳しく扱っています。

※本記事で示した差異率の水準や閾値は、2026年7月時点の一般的な考え方をもとにした目安であり、合否を定める基準ではありません。差異の会計上の取り扱いや自店に適した確認ラインの決め方は、顧問の税理士など専門家にもご相談のうえお決めください。