資金繰り表とは?何がわかる?
資金繰り表とは、会社に入ってくる現金(入金)と出ていく現金(支出)を月ごとに並べ、各月末に手元へいくら残るかを見える化した表です。損益計算書が「利益(もうけ)」を示すのに対し、資金繰り表は「現金が回るか(支払いを続けられるか)」を示します。これにより、数か月先に現金が足りなくなる月を、足りなくなる前に把握できます。
資金繰り表でわかるのは「利益」ではなく「現金」
同じ会社の同じ月を見ても、損益計算書(P/L)と資金繰り表は違う数字を返します。P/Lが数えるのは、売上や費用が「発生した」時点の金額です。商品を納めて請求書を出せば、代金が届く前でもその月の売上になります。対して資金繰り表が数えるのは、口座や手元のお金が実際に動いた分だけです。請求書を出しただけでは1円も計上しません。
だから「今月は利益が出ている」ことと「今月の支払いができる」ことは、それぞれ別に確かめる必要があります。P/Lが事業のもうけを測る計器だとすれば、資金繰り表は燃料計にあたります。もうけの計器だけを見て走り続けられるかを判断すると、燃料切れに気づけません。
基本の形は一本の式:前月繰越+入金−支出=月末残高
覚える式は一本だけです。月初に手元にあった現金(前月繰越)へ、その月に入ってきた現金(入金計:売上の入金、売掛金の回収、借入など)を足し、その月に出ていった現金(支出計:仕入、人件費、家賃、返済など)を引きます。残った金額がその月の月末残高で、それがそのまま翌月の先頭の数字になります。縦に入金・支出の項目、横に月を並べれば、表としての形は完成です。
数字を当てはめると、この表が何を見せてくれるのかがはっきりします(単位:万円)。
| 項目 | 4月 | 5月 | 6月 |
|---|---|---|---|
| 前月繰越 | 120 | 150 | 60 |
| 入金計 | 300 | 200 | 260 |
| 支出計 | 270 | 290 | 340 |
| 月末残高 | 150 | 60 | −20 |
4月は120+300−270で150。この150が5月の先頭に移り、5月は150+200−290で60。さらに60を引き継いだ6月は入金260に対して支出340がのしかかり、−20、つまり支払いきれない状態になります。売上そのものは3か月とも立っているのに、手元の現金だけが150→60→−20と細っていく——この推移を先回りして見せるのが資金繰り表です。
もう一つの勘所は、数字が右へ積み上がる仕組みそのものにあります。たとえば5月の入金見込みを30万円下げると、5月の残高が30万円減るだけでなく、それを受け取る6月も7月も同じだけ薄くなります。一か所の修正が右側の月すべてに波及するため、一部だけ直して先の月を放置すると、表の残高が実態からずれたままになります。再計算は手作業ではなく、数式かツールに任せるのが安全です。
いちばんの用途は「資金ショートの予知」
先ほどの例で6月が−20になると分かったとして、それを6月に入ってから知るのと、4月の時点で知るのとでは、選べる手段の数がまるで違います。当月に知った場合は支払いを待ってもらうか駆け込みで借りるかの二択に近づきますが、2か月前なら、取引先に入金を早めてもらえないか相談する、大口の発注や賞与の支払月をずらす、余裕をもって融資を申し込む、といった手が並びます。資金繰り表が生むのは現金そのものではなく、この「気づくまでの時間」です。
判断が分かれやすいのは、マイナスまでは落ちない月の扱いです。上の例の5月(残高60)のように、赤字ではないが普段より明らかに細い月は、予定外の支払いが一つ増えただけで下回ります。「この金額を割ったら手を打つ」という自分なりの最低ラインを先に決めておくと、ゼロを基準にするより一段早く動けます。
なお、表の精度を左右する最大の分かれ目は、金額を売上が立った月ではなく、代金が実際に届く月に置けているかです。締め日から支払いまでの期間は入金サイトと呼ばれ、たとえば末締め・翌々月末払いの取引先なら、1月に納品した分の金額は3月の欄へ回します。支出側も、仕入れた月ではなく代金が口座から出ていく月に書きます。ここを売上基準のままにすると、ショートの月自体が1〜2か月ずれて表示され、表を見ている意味が薄れます。
入金と支出を入れるだけで、月末残高の連鎖計算とショート警告まで自動。
上の表と同じ計算を代わりにやるのが「資金繰り表」ツールです。会員登録は不要で、料金もかかりません。開始月と期首残高だけ先に決めておき、あとは入金・支出を月別に入れていくと、収支と月末残高が12か月ぶん自動で計算されます。0以下になった月は赤く表示されるため、危ない月を目で探す必要もありません。CSVの往復と印刷にも対応。入力データはお使いの端末内(ブラウザ)だけで処理され、サーバーには送信されません。
拾うべき入金・支出の具体的な項目、税込と税抜のどちらで揃えるか、予定を毎月の実績で上書きして見通しを引き直す回し方など、実際に手を動かす段階の話は、コラム「資金繰り表の作り方」で手順を追って説明しています。あわせてご覧ください。
※本記事は2026年7月時点の一般的な情報提供を目的としたもので、会計・税務上の取り扱いは事業の内容により異なります。個別の判断については税理士等の専門家にご確認ください。