定量発注と定期発注は何が違う?使い分け早見表(単価・需要変動・品目数)

公開: 2026年8月18日

「うちの発注は定量発注? それとも定期発注?」と聞かれて即答できる担当者は、意外と少ないものです。毎週月曜に注文しているから定期発注のつもりでも、量は「棚を見て減っていた分」だったりします。2つの方式は何を固定して何を動かすかが根本から違い、安全在庫の持ち方まで変わってきます。

この記事では2方式を「時期」と「量」のどちらを固定するかという一本の軸で整理し、計算式と数値例、単価・需要変動・品目数で選ぶ使い分け早見表、実務で混ぜて使う考え方までまとめました。用語の定義は生産管理用語のJIS(JIS Z 8141:2022)に沿っています。

発注方式の種類|「時期」と「量」のどちらを固定するか

発注方式とは、「いつ」「いくつ」発注するかを決めるルールです。JIS Z 8141:2022は定量発注方式(7312)・発注点方式(7316)・定期発注方式(7321)などを定義しており、実務の基本形は定量発注方式と定期発注方式の2つ。軸はひとつ、発注の「時期」と「量」のどちらを固定し、どちらを動かすかです。

定量発注方式(発注点方式)

固定発注する量 動く発注する時期

在庫が「発注点」まで減ったら、あらかじめ決めた量を発注します。JIS Z 8141の7312にあたり、発注のきっかけは発注点方式(7316)と同じです。

定期発注方式

固定発注する時期 動く発注する量

週1回・毎月10日など決まった間隔で在庫を調べ、そのつど必要量を計算して発注します。JIS Z 8141の7321にあたります。

派生形もあります。

それぞれの仕組みと計算式(数値例つき)

定量発注方式(発注点方式)

この方式の判断材料は「在庫が発注点を割ったか」だけで、発注のたびに需要を予測し直す必要がありません。なおJISの発注点方式(7316)は発注量を需要に応じて変える形も含む広い定義で、量まで固定したものが定量発注方式(7312)です。

発注点 = 1日あたりの平均使用量 × 調達期間(リードタイム) + 安全在庫JIS 7314の「調達期間中の推定需要量+安全在庫」を実務向けに置いた形。発注量 = あらかじめ決めた一定量(発注単位・経済的発注量など)

1日平均20個使う品目で、リードタイムが5日、安全在庫を40個と決めたなら、発注点は 20 × 5 + 40 = 140個。在庫が140個以下になった日に、たとえば「1回200個」と決めた量を注文します。使用量が多い週は早く、少ない週は遅く発注点に達する——時期のほうが伸び縮みするのがこの方式の性格です。

長所は、判断が単純で属人化しにくく、荷受け・保管の段取りが立てやすいこと。短所は、こまめな在庫把握が要ることと、需要が大きく変わる品目には弱いことです。過去の平均で固定するため、使用量が跳ねると入荷前に欠品し、落ちても一定量が届き続けます。

定期発注方式

定期発注方式は、在庫を調べる間隔(発注間隔)を先に決め、調査のたびに「次の調査+入荷までを乗り切るのに足りない分」を発注します。JIS Z 8141:2022(7321)の発注量の式は次のとおりです。

発注量 = (発注間隔 + 調達期間)中の需要推定量 − 発注残 − 手持在庫量 + 安全在庫量「発注残」= 注文済みでまだ届いていない量

同じ品目(1日平均20個・リードタイム5日・安全在庫40個)を週1回=7日間隔の定期発注に替えると、カバーすべき期間は発注間隔7日+調達期間5日=12日。需要推定量 20 × 12 = 240個に安全在庫40個を足した280個から、手持在庫と発注残を引きます。調査日の在庫が150個・発注残ゼロなら発注量は 280 − 150 = 130個。翌週の在庫が90個なら190個と、量のほうが毎回変わるわけです。

見落としやすい違いがひとつあります。安全在庫がカバーすべき期間の長さです。定量発注は発注点を割ってから入荷するまでの「調達期間」のブレに耐えればよいのに対し、定期発注は次の調査日まで発注できないため「発注間隔+調達期間」という長い期間に耐える必要があります。同じ品目でも定期発注のほうが安全在庫は多めに要ります。見積もり方は「安全在庫はどれくらい持つべき?」で扱っています。

長所は、発注日が固まるので仕入先の締め日や配送便に合わせやすく、そのつど需要を見直すので変動に追従できること。短所は、調査のたびに需要推定の手間がかかり、間隔の途中で予想外に減っても次の調査日まで動きにくいことです。

2方式の違いを一覧で比較

ここまでを観点別に並べます。上の2行さえ押さえれば、残りは自然に導けます。

観点定量発注方式(発注点方式)定期発注方式
固定するもの1回の発注量発注の間隔(曜日・日付)
状況で動くもの発注する時期発注する量
発注のトリガー有効在庫が発注点に達した・割った決めておいた調査日が来た
発注量の決め方事前に定めた一定量上の式で毎回計算
安全在庫がカバーする期間調達期間発注間隔 + 調達期間(長い→安全在庫は多め)
在庫の把握発注点を割った瞬間を捉える必要調査日にまとめて数えればよい
1品目あたりの手間小さい大きい(毎回の需要推定)
需要変動への追従弱い(平均で固定)強い(そのつど再計算)

使い分け早見表|単価・需要変動・品目数で選ぶ

「どちらが優れているか」ではなく「どの品目にどちらを当てるか」が本題です。判断軸は単価(在庫金額)需要変動の大きさ品目数(管理にかけられる手間)の3つ。これに保管性と仕入先の条件を足した、2026年8月時点の一般的な考え方が下表です。

判断軸こんな品目は…向く方式理由
単価・在庫金額高い(在庫を寝かせたくない)定期発注そのつど必要量だけ頼み、余分を持たない
低い定量発注多少余っても金額影響が小さい。手間の少なさを優先
需要変動大きい・季節や流行で読みにくい定期発注発注のたびに需要を見直せる
安定した定番品定量発注平均で決めた発注点・発注量が長く使える
品目数・管理の手間少数の重要品目(ABC分析のA品目)定期発注手間をかけてでも在庫金額を細かく制御する価値がある
多数の細かい品目(B・C品目)定量発注1品目ずつ需要推定していられない。ルール化して回す
保管性劣化・陳腐化しやすい定期発注持ちすぎが廃棄に直結するので量を都度絞る
長期保管でき、入手も容易定量発注まとめ買いの余剰リスクが小さい
仕入先の条件締め日・配送日が決まっている定期発注発注日が固定されるなら量を合わせるほうが素直
随時受注・小口配送に応じる定量発注発注点を割った日に頼める

軸ごとに結論が割れることもあります。「単価は安いが需要が季節で揺れる」品目なら、金額影響が小さいうちは定量発注のまま季節ごとに発注点と発注量を切り替え、影響が大きくなるほど定期発注に寄せます。

実務では「混ぜて使う」のが普通

すべての品目を同じ方式で回す必要はありません。品目のグループごとに方式を変えるのが実務の標準的なやり方です。

どの形を選ぶにしても、発注点・発注量・発注間隔・安全在庫の根拠を数字で残すことが大切です。発注点の決め方は「発注点とは?どう決める?」、エクセルで判定を自動化する手順は「発注点の計算を自動化する方法」にまとめています。

定量発注(発注点方式)の「発注点」と「要発注の判定」を、品目ごとに入力するだけで自動計算(無料・登録不要)。
発注点・安全在庫計算ツールは、品名・1日平均使用量・リードタイム(日)・安全在庫・現在庫・発注単位を入れると発注点を計算し、現在庫が発注点以下の品目を「要発注」として赤く表示します。安全在庫は「日数分」と「数量」を品目ごとに切り替え可能。推奨発注量は「補充目標日数(既定14日)×平均使用量+安全在庫−現在庫」を発注単位の倍数に切り上げた値なので、判定は発注点・量は補充点まで、という折衷型の運用に向きます。「要発注のみ表示」で抽出し、発注担当者・承認者欄つきの発注リストの印刷、CSVの出力・取込にも対応(データは端末内のみで処理)。

発注点・安全在庫計算ツールを開く →

週1回の発注日にまとめて数える運用なら、現在庫の欄だけ入力し直せば要発注の品目が並びます。補充目標日数の目安は、ツール内のよくある質問にもあるとおり「発注サイクル+リードタイム」程度。なお発注残(注文済みで未着の量)の入力欄はないため、定期発注の式をそのまま再現するものではありません。入荷待ちのある品目は、推奨発注量から手元で差し引いてください。

まとめ

定量発注方式は「量」を固定して時期を動かす方式、定期発注方式は「時期」を固定して量を動かす方式です。定期発注は需要の変化に追従できる代わりに、安全在庫がカバーする期間が「発注間隔+調達期間」と長くなり、在庫はやや厚くなります。

使い分けの軸は単価・需要変動・品目数の3つです。実務ではABC分析などで品目を分け、A品目は定期発注、B・C品目は定量発注やダブルビン法と混ぜて使います。まずは主力品目について、いま固定しているのは量か時期かを言葉にするところから始めてみてください。

※本記事は、生産管理用語のJIS(JIS Z 8141:2022)の定義と、2026年8月時点で一般に紹介されている在庫管理の考え方を整理したものです。定量発注・定期発注のどちらが適するかは、取扱品目の売れ方、仕入先の締め日や最小発注単位、保管スペースなど個別の事情で変わり、本文の早見表はあくまで判断の出発点です。在庫の評価額や廃棄ロスの計上といった会計上の扱いは、税理士など専門家にご確認ください。