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有給が付く「出勤率8割」の計算方法|全労働日の数え方と、産休・欠勤・遅刻の扱い

公開: 2026年8月12日

有給休暇は勤続6か月で10日——そう覚えている人は多いのですが、条文にはもう一つ条件があります。「全労働日の8割以上出勤したこと」です。長期の病気休職や産休・育休、会社都合の休業が重なった年に、この条件が急に問題になります。数え方を誤ると、付くはずの有給を付け損ねます。

この記事では、労働基準法39条(2026年8月時点)と厚生労働省の解釈通達をもとに、分母「全労働日」と分子「出勤日」の数え方を早見表と計算例で整理します。付与日数は「有給休暇は何日もらえる?」、時効や年5日取得義務は別のコラムで扱うので、本記事は「8割の判定」に絞ります。

出勤率8割は「どの期間」を「何で割る」のか

労働基準法39条1項は、雇入れの日から6か月間継続勤務し「全労働日の八割以上出勤した」労働者に10労働日の有給休暇を与えると定め、2項のただし書は「出勤した日数が全労働日の八割未満である者」にはその後の1年間は与えることを要しない、としています。出勤率は最初の6か月だけでなく、毎年の付与ごとに判定されるわけです。

出勤率 = 出勤日数 ÷ 全労働日 ≧ 80%判定期間: 初回は入社から6か月間/2回目以降は基準日の前日までの1年間

判定するのは付与される直前の期間の勤怠で、付与日(基準日)以後の出勤状況は関係ありません。迷うのは「全労働日に何を入れ、出勤日に何を数えるか」だけです。

分母「全労働日」の数え方|所定休日を除き、休日出勤は入れない

「全労働日」は暦日数でも実働日数でもありません。厚生労働省の解釈通達(平成25年7月10日 基発0710第3号)は、全労働日を就業規則などで定められた所定休日を除いた日と定義します。押さえる点は3つ。

反対に、解雇無効が確定した場合の解雇日から復職日までのように、会社が正当な理由なく就労を拒んだ日は、全労働日に含めたうえで出勤日にも算入します(平成25年6月6日の最高裁判決を受けた通達の改正点)。「会社都合の不就労=分母から除外」と一括りにはできません。

分子「出勤日」の数え方|遅刻・早退は出勤、産休・育休・労災は「出勤とみなす」

分子は実際に労務を提供した日が基本です。判定は日単位なので、遅刻・早退した日、半日休暇や時間単位の有給で一部だけ働いた日も1日の出勤に数えます(労働局の解説にも「遅刻・早退した日は含めます」と明記)。遅刻が多いから出勤率が下がる、ということは基本的にありません。

さらに、休んでいても法律が「出勤したものとみなす」期間があります。労働基準法39条10項の3つに有給の取得日を加えた次の4種類は、全労働日に含めたまま出勤日にも数えます。

  1. 業務上の負傷・疾病による療養のための休業(労災の休業)
  2. 育児・介護休業法にもとづく育児休業・介護休業(出生時育児休業も同法上は育児休業の一種)
  3. 産前産後の休業(労働基準法65条。産前6週間・多胎14週間の請求による休業と、産後8週間)
  4. 年次有給休暇を取得した日(通達・厚労省の解説による)

逆にいうと、この4つに入らない休みは、法律上は出勤とみなす義務がありません。私傷病の欠勤、無断欠勤、生理休暇、慶弔休暇、子の看護等休暇・介護休暇などは、全労働日に含まれたまま出勤日には入らない(=出勤率を下げる)のが原則です。ただし「みなしてはいけない」わけではなく、厚生労働省のモデル就業規則の解説にも、生理休暇を出勤したものとみなして差し支えないとあります。通勤途中のケガ(通勤災害)による休業も、労基法上の「業務上」の負傷ではないため対象外です。法定の4種類以外は就業規則の定めで結論が変わると覚えてください。

判断が割れるのが長期の私傷病休職です。通達に明示がなく、欠勤の延長として全労働日に残す考え方と、就業規則で労働義務を免除した期間だから分母から外すという考え方の双方が実務にあります。どちらで運用するかを就業規則に書いておくのが確実です。

早見表|全労働日に入る?出勤日に入る?

規則次第は、法律に定めがなく就業規則しだいで結論が変わる項目です。

日の種類全労働日(分母)出勤日(分子)主な根拠
通常どおり出勤した日含む含む—
遅刻・早退・半休・時間単位年休の日含む含む日単位で判定(労働局解説)
年次有給休暇を取得した日含む含む通達・厚労省解説
産前産後休業・育児休業・介護休業・労災の休業含む含む(みなし)労基法39条10項
解雇無効の確定期間など、会社が就労を拒んだ日含む含む平成25年通達・最高裁判決
私傷病の欠勤・無断欠勤含む含まない労働者側の事由
長期の私傷病休職規則次第含まない通達に明示なし
生理休暇・慶弔休暇・子の看護等休暇・介護休暇・通勤災害の休業含む規則次第(法律上は含まなくてよい)39条10項に列挙なし
所定休日・休日出勤した日含まない含まない平成25年通達
不可抗力・会社側の経営管理上の障害による休業日、正当な争議行為の日含まない含まない平成25年通達

計算例|産休・育休の年と、休職・会社都合休業の年

日数は説明用の仮の値です。

例1:産休・育休を取った年

判定期間1年の所定労働日が245日。うち産前産後休業70日、育児休業60日、私傷病の欠勤15日、実出勤100日。全労働日は245日のまま、出勤日は 100+70+60=230日(産休・育休は出勤とみなす)。

230 ÷ 245 = 93.9% ≧ 80% → 付与

例2:私傷病休職の年/会社都合休業の年

所定労働日250日のうち私傷病休職で60日休み(休職を分母に残す扱いの場合)、通勤災害の休業が5日(就業規則に出勤扱いの定めなし)。

(250−60−5) ÷ 250 = 74.0% < 80% → この年度は付与なし

別の年、同じ250日のうち会社が受注減で20日休業を命じ(経営管理上の障害)、本人の欠勤が40日。休業20日は分母から外します。

(250−20−40) ÷ (250−20) = 190 ÷ 230 = 82.6% ≧ 80% → 付与

休業20日を分母に残して欠勤同様に扱うと 190÷250=76.0% で結論が逆転します。

欠勤の上限 = 全労働日 −(全労働日×0.8 を切り上げた日数)で「あと何日休めるか」が出せます。8割は「以上」なので80.0%ちょうどは満たし、79.9%は満たしません。四捨五入の定めは法令になく、端数は実数のまま判定するのが安全です。

判定期間の全労働日必要な出勤日数欠勤の上限目安となる働き方
78日63日(62日だと79.5%)15日週3日勤務・6か月
125日100日25日週5日勤務・6か月
208日167日(166日だと79.8%)41日週4日勤務・1年
250日200日50日週5日勤務・1年

8割に届かなかったら?|その年は付与なし、勤続年数はリセットされない

出勤率が8割未満なら、39条2項ただし書のとおり基準日から1年間は付与しなくてよく、初回の6か月で8割未満なら10日の付与が発生しません。誤解されやすいのが「勤続年数まで振り出しに戻る」という思い込みで、実際には付与されなかった年も継続勤務年数に通算されます。厚生労働省のモデル就業規則の解説でも、8割未満の翌年度は付与しなくてよいが、その年度に8割以上へ戻れば次の年度は継続勤務期間に応じた日数を付与しなければならない、と説明されています。

付与されなかった年でも前年からの繰越分は使えます。時効(2年)前の残日数は出勤率と無関係で、「今年は付与ゼロ=有給が一切ない」ではありません。

8割の判定を通ったあとの「付与日数・残数・年5日義務」は、入力するだけで自動計算。
有給休暇管理表は登録不要・無料。社員の入社日と週所定労働日数を入れると、労働基準法39条にもとづく付与日数(週1〜4日勤務の比例付与にも対応)、2年時効を反映した現在残数、年5日取得義務の達成状況を「評価日(基準日)」を指定して一覧にします。取得日はカレンダーから選び、半日は各日のチェックで0.5日扱いにできます。付与履歴には基準日ごとの付与・消化・失効・残と時効日が並びます。CSV出力・取込と印刷に対応し、入力内容はブラウザ内で処理され外部に送られません。

有給休暇管理表を使ってみる →

なお、このツールは出勤率8割の要件そのものは判定しません(ツールの計算基準に「常に満たす前提」と明記されています)。出勤率は本記事の考え方で別途計算し、8割未満の年があれば付与履歴の該当年を読み替えてください。一斉付与・前倒し付与も入社日基準のため非対応です。

まとめ

「全労働日の8割以上出勤」は式にすれば出勤日÷全労働日の一行ですが、中身は「分母から外す日」と「分子に入れる日」の仕分けで決まります。分母は所定休日を除いた日で、休日出勤や会社側の経営管理上の障害による休業日は入れません。分子は日単位なので遅刻・早退・半休の日も出勤に含み、産休・育児介護休業・労災の休業・有給取得日は出勤とみなします。私傷病の欠勤や生理休暇は法律上は出勤に数えなくてよく、長期の休職も含め就業規則で結論が変わります。

8割に届かなかった年は付与がゼロになりますが、勤続年数は通算され、翌年8割以上なら勤続に応じた日数が戻り、時効前の繰越分はそのまま使えます。休業や休職が絡んだ人だけ個別に出勤率を出し、就業規則の出勤扱いの範囲を確認しておけば、この要件で迷う場面は大きく減らせます。