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循環棚卸(サイクルカウント)とは?一斉棚卸との違いと少人数現場のやり方

公開: 2026年8月12日

「棚卸の日は店を閉めて、全員で朝から晩まで数える」——そう思い込んでいる現場は多いはずです。ところが、スタッフが3人しかいない店や、日中ずっと入出荷が続く倉庫では、そもそも「全部を一度に止めて数える」こと自体が難しいのが実情です。そこで選択肢に上がるのが循環棚卸(じゅんかんたなおろし)=サイクルカウントです。

この記事では、循環棚卸の意味を一斉棚卸との対比で押さえ、違いを早見表にまとめたうえで、期末の実地棚卸との関係、少人数の現場が週30分程度から回すための計画と手順を整理します。数え方のコツや差異の原因の追い方は別記事に譲り、「いつ・どこを・どの順で数えるか」という方式の選び方と運用設計に絞ります。

循環棚卸(サイクルカウント)とは何か

循環棚卸とは、在庫を保管場所や品目のグループに分け、業務を止めずに、順番に少しずつ数えていく棚卸の方式です。今週はA棚、来週はB棚……と一定の周期で巡回し、決めた期間で全品目を一巡させます。品目を順にサイクルさせて数えるので、サイクルカウントとも呼ばれます。

対になる言葉が一斉棚卸です。決めた日に業務を止め、その時点の在庫を全品目まとめて数え切る方式で、月末や期末の「実地棚卸」といえば一般にこの形を指します。違いを一言でいえば、「一度に全部」か「分けて順番に」かです。

分割循環棚卸(サイクルカウント)

在庫をグループ分けし、周期を決めて順番に数えます。1回に数えるのは全体の一部で、営業や入出荷は止めません。差異はその都度つぶします。

一括一斉棚卸

決めた日時に業務を止め、その時点の在庫を全品目いっぺんに数え切ります。在庫全体がその日に確定する代わりに、人手と時間を集中投入します。

どちらも「帳簿在庫と実在庫を突き合わせて帳簿を正す」目的は同じで、違うのはいつ・どの範囲で・どの頻度で行うかだけです。循環棚卸は、1回あたりの負荷を小さくして確認の機会を年間に散らす方式だといえます。

一斉棚卸との違い早見表

現場が気にする観点ごとに並べます。優劣ではなく、自分の現場の制約(人数・営業時間・品目数)に合うほうを見る表です。

観点循環棚卸(サイクルカウント)一斉棚卸
1回に数える範囲一部(棚・カテゴリ・ABC区分などのグループ単位)全品目
実施の頻度毎日〜毎週など継続的。品目ごとに周期が違う年1〜12回(期末・月末など)
業務の停止原則不要(数える棚の入出庫だけ一時的に止める)営業・入出荷を止めるのが基本
1回あたりの人手1〜2人・短時間で済む多人数を1日に集中投入
差異に気づく時期早い(その週・その月のうち)。原因を追いやすい遅い(次の棚卸まで気づかない)。原因が古くて追いにくい
「同一時点の全在庫」一巡しても時点はバラバラ。全体像はつかみにくいその日の在庫総額がそのまま確定する
向いている現場品目が多い倉庫、営業を止めにくい店、少人数の現場品目が少ない店、決算日の在庫額を一発で確定したい現場

循環棚卸の最大の利点は、業務を止めずに少人数で回せることと、差異を「新しいうち」に見つけられることです。切り替えの目安としては、品目が数十点で1〜2時間あれば数え切れるうちは一斉棚卸、数百点以上あって一度に数えると丸1日かかるなら循環棚卸、と考えると判断しやすくなります。弱点は、全在庫を同じ時点でそろえにくいことと、計画管理が緩むと「一巡したつもりで数えていない棚」が生まれることです。この弱点は次の2節で補います。

期末の実地棚卸との関係|循環棚卸だけで済むのか

気になるのは「循環棚卸を年間通してやっていれば、期末の一斉棚卸は省略できるのか」でしょう。国税庁の法人税基本通達5-4-1(棚卸しの手続)は、棚卸資産について各事業年度終了の時に実地棚卸をしなければならないとしたうえで、法人がその業種・業態・棚卸資産の性質等に応じて、実地棚卸に代えて「部分計画棚卸しその他合理的な方法」により事業年度末の在高等を算定することとしている場合には、継続適用を条件にこれを認める、と定めています(2026年8月時点)。

計画的に一部ずつ数える循環棚卸は、この「部分計画棚卸し」の発想に近い方式です。ただし通達が求めるのは「合理的な方法で期末在高を算定できること」と「毎期続けること」で、名前が循環棚卸なら自動的に認められるわけではありません。実務上は、①全品目が計画どおり期中に一巡している、②いつ・誰が・どの棚を数え、差異をどう処理したかの記録がある、③帳簿在庫の精度が保たれている——このあたりが問われます。

あわせて、青色申告法人には棚卸表などの決算関係書類を7年間保存する義務があります(法人税法施行規則第59条第1項第2号)。その起算日は、書類を作成した日の属する事業年度終了の日の翌日から原則2か月を経過した日です(同条第2項)。各回の記録も、棚卸表を裏付ける資料として残す前提で設計しておくと安全です。

結論としては、循環棚卸を主にしつつ、期末だけは全体をそろえる(期末に一斉棚卸を行う、または期末月に全グループを集中的に一巡させる)組み合わせが、少人数の現場でも無理がなく、説明もつけやすい形です。自社の方法が「合理的な方法」にあたるかは、決算を任せている税理士に事前に確認してください。

年間計画の作り方|グループ分けと頻度はABCで決める

循環棚卸がうまく回るかどうかは、数え始める前の「計画表」で決まります。ポイントは、品目をグループに分け、グループごとに数える頻度に差をつけること。全品目を同じ頻度で数えると、重要でない品目に時間を取られ、肝心の主力品目の確認が薄くなります。

頻度差の物差しとして広く使われるのがABC分析です。売上や在庫金額への寄与が大きい順にA・B・Cに分け、Aは高頻度(毎週〜毎月)、Bは中頻度(四半期に1回など)、Cは低頻度(半年〜年に1回)で数えるのが典型的な組み方です。金額の大きい品目ほど差異1個の影響が大きく、動きの速い品目ほど記録漏れが起きやすいからです。

品目300点の店舗で、A=60点(毎月)、B=120点(四半期に1回)、C=120点(半年に1回)と決めた場合の年間延べ回数です。

区分品目数頻度年間の延べ回数
A(主力・高額・高回転)60毎月(年12回)720
B(中位)120四半期に1回(年4回)480
C(低額・低回転)120半年に1回(年2回)240
合計300—1,440

1,440回 ÷ 48週 = 週あたり約30品目年52週から繁忙期・連休などを除いた48週で回す前提。1品目1分で数えて突き合わせるなら、週1回30分の枠に収まる計算(机上の目安)

ここは正確に見ておく必要があります。延べ1,440回は、年1回の一斉棚卸(300品目=延べ300回)の約4.8倍です。循環棚卸は数える総量を減らす方式ではなく、増えた確認量を週30分の枠に薄く伸ばす方式だと理解してください。1回あたりが軽いので続けられ、その代わりA品目は年12回数えるので主力品目の精度は上がる——このトレードオフが本質です。この計算をもとに、「第◯週はどのグループのどの棚か」を1年分の表に落とすのが計画表です。

グループ分けの軸は、ABCが難しければ場所(棚・区画)でも構いません。小さな店なら「A棚→B棚→レジ裏→バックヤード」を4週で一巡させ、毎月繰り返すだけでも年間12回全体を回したことになります。大切なのは、全品目がどこかのグループに入っていて、計画表を一巡すれば全体を数え終える構造になっていることです。

少人数現場のやり方|1回30分で回す5ステップ

計画表ができたら、毎回は決まった手順の繰り返しです。1〜2人で、営業前や入荷前の30分に収める前提で組みました。

  1. 今回の対象を計画表で確認し、帳簿数を出力する — 対象グループのコード・品名・帳簿数・単価の一覧を用意します。POSや販売管理ソフトから、そのグループ分だけCSVで切り出しておくと突合が楽です。
  2. 対象の棚だけ「時点」を止める — 数えている最中に対象棚から商品が出ていくと差異の元になります。数える棚だけは、開店前・入荷前など動きのない時間帯を選ぶか、数え終わるまで出庫を待ってもらいます。範囲が狭ければ止める時間は数分で済みます。
  3. 数えて、その場で帳簿数と突き合わせる — 実棚数を帳簿数の隣に書き込み、差異数と差異率を出します。1グループ30品目程度なら、差異のある品目を拾い出すのもその場で済みます。数え方のコツは「棚卸のやり方と差異が出たときの対処」にまとめています。
  4. 差異はその日のうちに原因を追い、帳簿を正す — 差異は「前回から今回まで」の間に起きたことがほとんどで、伝票と記憶が新しいうちに原因にたどり着けます。切り分け方は「棚卸で差異が出たらどうする?」、プラス・マイナスの向きからの追い方は「棚卸差異はプラスとマイナスで原因が違う」を参照してください。判明したら帳簿在庫を実数に合わせ、理由をメモに残します。
  5. 記録を残し、計画表に「済」を付ける — 実施日・担当者・対象グループ・差異のあった品目と処理内容を、回ごとに1ファイル(または1枚)で保存します。計画表に済印を付ければ数え残しは消え、記録の束が期末に「年間で全品目を計画どおり数えた」ことを示す資料になります。

回数を重ねたら、毎回きれいに合う棚は周期を伸ばし、差異が繰り返し出る棚は周期を縮める——差異の出方に応じて頻度を調整すると、限られた30分をより効果的に使えます。差異率のものさしは「棚卸差異率の許容範囲は何%?」で扱っています。

週ごと・棚ごとの帳簿在庫CSVを取り込んで、その回の差異だけを手早く洗い出す。無料・登録不要。
棚卸集計・差異チェックは、「帳簿在庫を取込」ボタンで コード,品名,帳簿数,単価 の4列CSVを読み込むと、実棚数を空にした状態から現場での入力を始められます。空のままの品目は「未計上」として実棚金額・差異金額の合計から除いて警告するので、数え忘れが紛れません。実棚数を入れると差異数と差異金額、差異率(差異数÷帳簿数×100)が自動計算され、閾値(既定5%)を超える品目は赤で強調、「差異のある品目のみ表示」で追うべき行だけに絞れます。「CSV出力」のファイル名には当日の日付が自動で付き、「棚卸報告書を印刷」では棚卸担当者・確認者の記入欄付きの報告書(棚卸日は印刷当日)も出せます。数えた数量が端末の外に出ることはなく、集計はすべてブラウザ内で完結します。

棚卸集計・差異チェックを使ってみる →

循環棚卸で使う場合は、5ステップの①で「今回のグループ分の帳簿在庫CSV」を用意して取り込むと、対象品目だけの一覧で作業できます。取込は追加ではなく品目一覧の置き換えなので、前回分を残したいときは先に「CSV出力」で保存しておきます(「帳簿在庫を取込」では差異率の閾値は維持されます)。保存先はブラウザ内(端末1台ぶん)のため、複数人で数える場合は用紙に書いて1台にまとめて入力するのが確実です。

まとめ

循環棚卸(サイクルカウント)は、在庫をグループに分け、業務を止めずに順番に少しずつ数えていく方式です。一斉棚卸との違いは「一度に全部か、分けて順番か」で、少人数で回せること、差異を新しいうちに見つけて原因を追えることが強み。弱点の「同一時点の全体像」と「数え残し」は、年間計画表と回ごとの記録で補います。期末の実地棚卸との関係は法人税基本通達5-4-1が拠り所で、期中は循環・期末は全体をそろえる併用が現実的な着地点です。

計画はABC(または場所)でグループ分けし、A品目ほど高頻度に。品目300点なら週30分程度で回る計算です。まずは今の一斉棚卸から主力品目だけを月1回の小さな循環に切り出し、負担の減り方と差異の見つかりやすさを確かめてみてください。